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LYCRA®NEWS

2010/09/29

「ノリとたゆたう。」 瀬戸内国際芸術祭/大阪芸術大学豊島アートラボ

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瀬戸内の強い日差しから逃れて建物内に入ると、そこには暗く、静かな海をたたえた「庭」があった。暗がりの中、そこに恐る恐る体を沈めてみると、体がふわりと浮かぶ。 打ち寄せる波、滴の音、気づけば体の傍で、さらさらと光がこぼれ落ちている。遠く頭上には海面が見える。ここは、まるで海の中に静かに漂うような、不思議な感覚を体験できるインスタレーション「ノリとたゆたう。」、様々な領域のクリエイターが集う大阪芸術大学豊島アートラボによるプロジェクトだ。

島の中にある、もう一つの海

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唐櫃港に停泊するフェリー

瀬戸内海に浮かぶ豊島は、直島や小豆島など7つの島々を舞台に開催されている瀬戸内国際芸術祭の会場のひとつ。島のあちこちに作品が文字通り点在しており、島の地図を見ながら作品を訪ね歩いていく。大阪芸術大学豊島アートラボは唐櫃(からと)港から歩いて約6分、今は使われなくなった海苔の加工場を活用したスペースだ。」

作品は、瀬戸内の海と島を立体的に模した「庭」部分と、それを枯山水の庭園の如く眺めることができる「縁側」部分からなる。「庭」部分は、全体が伸縮素材のファブリックで覆われており、その所々を瀬戸内の小島に見立てた大小の支柱が支えている。さながら波を打った巨大なハンモックのような印象だ。そして訪れる者は体を預けるように、おっかなびっくり、そこへ横になる。姿勢によってファブリックがたわむだけでなく、他の鑑賞者が動くと自分のポジションも微妙に変化するという、柔らかく包まれるような安心感と、いつまでも同じではない頼りなさが同居する二面性。そこへ音響と映像が加わり、そこにいる者を海の中の世界へ誘っていく。

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作品に込められたテーマ「海の復権」

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海苔の養殖網を海底に固定するため
の錨。大きく鋭い爪が特徴的。

この作品の全体構成と、とりわけ「庭」部分のコンセプトデザインから制作まで携わったのが、大阪芸術大学デザイン学科出身のデザイナー、小林新也さんだ。「今回の作品は、僕が昨年『リビング&デザイン展』で発表したSKINTEXという題のデザインスタディを、この芸術祭の総合テーマである「海の復権」にあわせて企画、再編集して実現したものなんです。」入口には「ノリとたゆたう。」と書かれた黒い大きなのれん。海苔という作品の主題はどこから発想を得たのだろうか?「豊島はかつて海苔の養殖が盛んだったのですが、過去には島への産業廃棄物の不法投棄問題によるイメージ悪化から、豊島産の海苔が売れなくなったこともありました。また、温暖化の影響で水揚高が減少し、手作業で行っていた海苔の加工も機械化が進んだ為、海苔の加工場の空き家が増えています。こうした背景から、海苔の加工場跡を作品に使わせていただくことになりました。」建物の隣のスペースには、海苔の養殖網を海底に固定するための大きな爪状の錨が多数並んでいる。10月末には海苔の養殖のため再び海底に沈められるのだそうだ。

「海苔は海の中で潮の流れに身をまかせながら、ただ光を浴びながら育っていくんです。周囲の環境をひたすら受け入れるしかない。この作品も、自分が海苔になったような感覚を体験しながら、自然との共生とか、人との関わり合いとか、そういうものを感じてもらえれば、と思っています。」 平日にも関わらず、静かな島に次々と人が訪れてくる。「週末だと300人くらいの来場があります。海外からの訪問者も多くて、中には1時間くらいずっと見てくださる人もいます。もっとも、バスの時間があるので気ぜわしく次の作品へ向かう人も多いですが、できれば15分間の音と映像のセッションをじっくり体感していただきたいですね。」