HOME ニッポン、繊維の底ヂカラ! 有限会社山信織物(新潟県長岡市)

産地の得意技と感性の融合――。
現時点で、山信織物の集大成と言えるのが、「ライクラ®T400™ファイバー」の先染め織物だ。東レ・オペロンテックスが展開するPTT複合繊維のT400™ファイバーは、少ない伸縮性を求める用途に適した素材。従来のポリウレタン繊維では難しかった薄地シャツやスポーツジャケット、ユニフォームなどで採用が進んでいる。

「ライクラ®T400™ファイバーの先染めに関していえば、山信が日本一だと自負している」。剛士統括部長が胸を張る。この言葉の背景には、それだけ苦労して作り上げたという自負がある。同社がライクラ®T400™ファイバーのチーズ染色(糸の先染め)を本格始動させたのは2年前。最大の課題は、縮率だった。「先染めはある意味、作り安くもあるが、物性がポイントだった」と剛士統括部長。「シャンブレーを生産する際、気温や湿度などの天候要因で糸の収縮率が変わってしまう。また、糸を組み合わせて品質を安定させることが困難を極めた」。吉邦統括副部長も当時を振り返る。
しかし、試行錯誤の末、課題を克服した。今では日々進化を遂げるライクラ®T400™ファイバーの先染め素材。来シーズン向けには「風合いのあるライクラ®T400™ファイバー混の織物が出来上がった」(吉邦統括副部長)という。キュプラやリヨセル、ナイロン、テンセルを組み合わせ、落ち感のある表情を具現化させた。

従業員数は44人。工場内の省力化に注力する
「当社には定番品があるわけではない。消費者の声をカタチで応えていくことしか、我々の生き残る道はない」。吉邦統括副部長が言う。小ロットやQR対応はもちろんのこと、ロスの低減が課題だ。「いかに早く、新たな差別化素材を提案できるかがカギになる。そのためには、取引先もひとつのチームとして意識し、連携を取りながら、お互いの知恵を出し合い、それぞれの持ち味も生かして市場のニーズに応えたい」。
今後、そのニーズの一つとして開発を加速するのが、機能性素材だ。“山ガール"に代表されるように、現在はアウトドアブームの真っ只中。「今の世の中、機能的なファッションにトレンドが動いている。きっとメンズにもこの流れはくるだろう」。ファッションが好きで、トレンド情報をつぶさにチェックする吉邦統括副部長が強調する。「着用してその機能がしっかり体感できるもの。例えば接触冷感など、リアリティのある素材を開発したい」。また、「今まで出来そうで出来ていなかった、麻混40〜50%のストレッチ素材の開発にも挑戦する」。開発への意欲は尽きない。

レピア織機は51台。最大で220cmまでの対応が可能だ。
一方、剛士統括部長は、日本の“リアルクローズ"にこだわりを見せる。「商売のスケールはあるにこしたことはない。ただ、欧州で積極的に素材を売っていきたいとは考えていない」。その代わり、「日本の消費者に愛される衣料品を開発する。一般ユーザーが気取らずに使ってもらえるような素材を作りたい」と話す。これは、量販店向けの素材を作るという意味ではない。見据える先は、あくまでもファッション衣料。他社にはない差別化素材を生産することで、顧客とともに「愛される衣料品」の開発を目指していくと言う。
「常にそばに弟がいることが心強い」。そう言って笑顔を見せる剛士統括部長。「2人で新しい素材を考えるのは、何よりも楽しい」。ニッポンの底ヂカラは、モノ作りを愛して止まない2人に、脈々と引き継がれていく。